The Notes
ソクジン 2022年4月11日 再び注ぐ日差しの中で目を開いた。瞼の向こうには未だコンテナに立っていた火柱と、死んでいくナムジュンの姿が残っていた。今回も失敗だった。腕をあげて目を覆って考えた。ナムジュンを助けるにはどんな方法が残っているんだろうか…
ソクジン 2022年6月4日 父の書斎へ入ると、目につく絵がひとつある。茫々とし、跳ね上がる大波の上に危うげな筏(いかだ)。飲むものも食べるものも無く、羅針盤も希望も無く捨てられた人々。渇きと空腹、恐れ、恐怖と欲望に、鳥の血を吸い、鳥を殺し、そう…
ソクジン 2022年9月30日 誰ならば、愛が始まった瞬間を覚えていられるのだろう。誰ならば、愛が終わる瞬間を予測できるのだろう。人間にその瞬間たちを認知できる能力が与えられなかったことは、何の意味があってのことなんだろうか。そして僕にそのすべてを…
ソクジン 2022年9月15日 自分でも知らないうちに急停車したのは、ぎゅっと詰まっていた交差点を抜け出て速度が付き始めた頃だった。後ろの車が神経質にクラクションを鳴らして通りすぎて行って、誰かが悪口を吐き捨てたようだったけど、都市の騒音の中ではよ…